「原田和典 note」

現在地はいづくなりや 映画監督東陽一

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映画『現在地はいづくなりや 映画監督東陽一』の試写に行きました。監督・編集は東監督の薫陶を得た小玉憲一。
東監督は1934年生まれ。ということは前田陽一監督や降旗康男監督と同い年です。長編デビュー作はドキュメンタリー映画『沖縄列島』。初の劇映画『やさしいにっぽん人』で日本映画監督協会新人賞を受賞し、『サード』、『もう頬づえはつかない』、『四季・奈津子』、『橋のない川』などの名作・話題作を世に出しています。ぼくが見たことのあるのは20数作中、おそらく3割に満たないのですが、往年の作品の抜粋映像もしっかり挿入されていて、しかも東監督みずからが創作術や撮影時のエピソードを語り、加えて緑魔子、烏丸せつこ、常盤貴子ら主演女優との対談も収録、さらに終盤では映画作家で早稲田大学名誉教授でもある安藤紘平が、とてもわかりやすい「論」を展開します。何年どこそこ生まれで、いつ映画を好きになったとか、いつ監督を志したかなどのバイオグラフィ的なところは、意図的に収めなかったのでしょうか。見た後、各自でそれを調べたくなるような作品です。ところどころで、クラシック・ギター奏者である大谷恵理架の演奏する「シャコンヌ」が数回、動画ごと挿入されるのも、独特の風香を醸し出しています。ポレポレ東中野にて 2 月22日よりロードショー、以降全国順次公開。174.png




# by haradakazunori | 2020-02-20 09:46 | 映画

うたのはじまり

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映画『うたのはじまり』(河合宏樹監督)の試写に行きました。アメリカ映画に『はじまりのうた』という邦題のついた作品がありましたが(原題: Begin Again)、こちらは“ろう”の写真家、齋藤陽道を追ったドキュメンタリーです。20歳の時に補聴器を使うことをやめ、写真家としての活動を開始。数々の写真集・著作を発表し、芸能方面では窪田正孝、Mr.Children、クラムボン等のフォトも撮影してきました。そんな彼に、やはり“ろう”の写真家であるである夫人・盛山麻奈美との間に、“聴者”の息子を授かったことで訪れる変化。これまで聴力の問題もあり、「うた」も「音楽」もどちらかといえば嫌いだった彼が、何かから吹っ切れたかのように自分の声と旋律で息子に歌いかけ、あやします。息子の存在は彼の心の扉をさらに大きく開け、新たな光を注ぎます。前半、飴家法水のワークショップでフィーチャーされるときの表情と、その数年後にあたる後半、飴家一家と談笑する表情の違いは、そのまま齋藤氏の心境のあざやかな変化でもありましょう。七尾旅人やCANTUS等、ミュージシャンの登場シーンも見ものです。
“音を聴く/音が聴こえる”メカニズムに一度でも関心を持った方なら、まずは見るべき一作ではないかとの思いを強くしております。2月22日より東京シアター・イメージフォーラムでロードショー。以降、名古屋・名演小劇場、大阪・シネ・ヌーヴォ、京都・みなみ会館ほかにて順次公開。169.png




# by haradakazunori | 2020-01-27 12:17 | 映画

雑誌情報

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「レコード・コレクターズ」最新号に書いています。フリーダム・レコーズ再発等。
「ミュージック・マガジン」最新号に書いています。Cö shu Nie(コシュニエ)インタビュー等。
「HiVi」最新号に書いています。2019年のベスト10(映像中心)を選んでおります。
「ジャズジャパン」最新号に書いています。また2019年の国内盤ベスト・ジャズ・ディスクの鼎談に参加しております。
ぜひお読みください!!! 原田和典・著『コテコテ・サウンド・マシーン』(スペースシャワーブックス)も絶賛発売中!169.png




# by haradakazunori | 2020-01-25 12:45 | 書籍・雑誌

デニス・ホッパー アメリカン・ドリーマー

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映画『デニス・ホッパー アメリカン・ドリーマー』の試写に行きました。ミネアポリスに保管されていた世界唯一の16ミリ・プリントからのデジタル化、いわくつきの“幻の作品”です。フィーチャーされるのは、1970年12月、ニューメキシコ州タオスにあるD・H・ロレンス(日本では伊藤整との関わりでとりわけ有名でしょうか)の元別荘で監督第2作『ラストムービー』を編集中のデニス・ホッパー。監督・制作・共同脚本はローレンス・シラー(ラロ・シフリンの音楽担当作品として本ブログの読者はご存じであろう『暴力脱獄』Cool Hand Lukeでデニスと出会いました)とL・M・キット・カーソン(南北戦争やナバホ戦役で活動したキット・カーソンの孫だそうです)。
当初はわざわざハリウッドから離れた荒野にコミューンを構えて共同生活を送るデニスにまつわるドキュメンタリーになる予定だったそうですが、厳密にはそう呼べないものができあがりました。トロンとしつつもキュッとしている目(個人的には、1984年に至近距離で見たジャコ・パストリアスの目が、やはりこんな感じだったことを思い出します)で、壮大なのか矮小なのかわからないヴィジョンを下ネタも含めて語りまくるデニス。どこまでが演技でどこからが地なのか? 現実と妄想の間をさまよっているような、「頭で追うと混乱するぞ、まず見て、聞いて、感じろ」とこれから見るひとたちに伝えたくなるような内容です。写真家として活動していた時代の貴重なショットもいくつか挿入されていて、「フォトグラファーとしての足跡」「スティルとムーヴィーのアプローチの違い」などを真剣に、わかりやすく語るデニスの姿も実に絵になっています。またチャールズ・マンソン(69年末に逮捕)に関するコメントも、デニスにしか実感を持って言えない内容なのではと思います。
フォーク・ロック調のサウンドが随所でフィーチャーされるのもポイントです。監修はチェット・ベイカー、ビーチ・ボーイズ、グレン・キャンベル、フレッド・ニール他の作品作りにも関わった名プロデューサーのニック・ヴェネット。フレッドのほかジーン・クラーク(元バーズ)、バック(バッキー)・ウィルキン、トッド・ラングレンとも交流のある“ハロー・ピープル”などの音楽も楽しむことができます。
「1970年のラリリを、2020年にシラフで観る」、これはこれで実に興味深いエクスペリエンスでありましょう。2月1日から『イージー★ライダー』(日本公開50周年記念特別上映)と共に渋谷ユーロスペースにてロードショー。112.png




# by haradakazunori | 2020-01-11 10:42 | 映画

友川カズキ どこへ出しても恥かしい人

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あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
映画『友川カズキ どこへ出しても恥かしい人』の試写に行きました。監督は佐々木育野。1975年にアルバム・デビューした偉大なシンガー・ソングライターの、2010年夏の日常を切り取ったものです。
歌い、談笑し、競輪に興じ、絵を描き、酒やたばこをのみ、歌い、談笑し、競輪に・・・・という行為がほぼループのように繰り返される60数分といっていいでしょう。何をやるにしても「猛烈」、リミッターが搭載されていない者が持つ、捨て鉢の凄みが画面からほとばしります。息子たちとの会話、同級生女子の回想(「昔からいい男でクラスの人気者だった」など)も暖かみがあり、1985年に水死した盟友・たこ八郎について語るシーンにも引き込まれました。
演奏シーンも当然ながら見どころ満載です。フルコーラス聴きたければぜひライヴに、ということでしょうか、抜粋ではあるのですが、「夢のラップもういっちょう」(この曲のラップとは“レースのペース”のこと。ヒップホップとは無関係)、「ワルツ」、「生きてるって言ってみろ」、「乱れドンパン節」など名曲の波状攻撃です。移動中のバンのなかで行なわれる永畑雅人、石塚俊明とのセッションには、友川のファンであれば誰もが「この場にいたかった」と思うことでしょう。
友川を追った映画には、すでにヴィンセント・ムーン監督『花々の過失』(2010年公開)がありますが、それをご覧になった方も、そうでない方も、ぜひ『友川カズキ どこへ出しても恥かしい人』に接して、この不世出の表現者の深みにはまっていただけたらと思います。2月1日から新宿K’s cinemaにて公開。以降、全国順次公開予定。177.png




# by haradakazunori | 2020-01-09 09:47 | 映画

音楽ライター/ジャーナリスト、原田和典の文章や情報をお伝えします。
by harada kazunori

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