「原田和典 ブログ人」

カテゴリ:映画( 105 )




北の果ての小さな村で

c0348127_14255948.jpg
映画『北の果ての小さな村で』の試写に行きました。グリーンランドにある人口80人の村“チニツキラーク”に、デンマークから28歳の青年が「デンマーク語を教えるために」やってきたことで起こるさまざまなことを描いた作品です。
親の農場を継ぐか、外に出ていくか。その選択に迫られた青年は、後者を選択します。チニツキラーク行きには“自分探し”的ニュアンスもあったようですが、圧倒的なリアルが彼の前に立ちはだかります。冬の過酷さ、自然の雄大さ、風習の違い、すでに自分たちの言語を持っている人々にわざわざ「デンマーク語」を習わせることの意義などなど。物語はじっくりと進み、エンディングにいくにしたがって青年と地元民は笑顔を増やしていきます。心が徐々に通じ合っていくところを、丁寧に描いた作品という印象を受けました。
監督はフランスのサミュエル・コラルデ(2年かけてグリーンランドを旅したそうです)、教師役に扮したのはアンダース・ヴィーデゴー。彼は実際に教師として、今も村で暮らしているそうです。昔あったテレビ番組「世界ウルルン滞在記」をちょっと思い起こさせもしてくれました(ただし、あえて泣かせにかかる演出はない)。7月にシネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー。日本の蒸し暑い夏を涼しくする一作になることでしょう。177.png




by haradakazunori | 2019-05-17 09:30 | 映画

氷上の王、ジョン・カリー

 
c0348127_14255960.jpg
映画『氷上の王、ジョン・カリー』の試写に行きました。監督はジェイムス・エルスキン。冬季オリンピック(1976年、オーストリア・インスブルック)の金メダリストにして、「アイススケートをスポーツから芸術に昇華させた」と評される伝説的人物を題材にしたドキュメンタリーです。
恥ずかしながら、ぼくは今回、初めて彼の名を知りました。見終わって、「知ることができて良かった」と思いました。鮮やかでリズミカルな“舞い”は、音楽ファンの心にも十分、訴えてくると思います。クラシック音楽で踊る姿はもちろんのこと、個人的にはジャン=ミシェル・ジャール作曲「バーン」の元祖テクノ・ポップ的サウンド作りに合わせて躍動する場面に大きく惹かれました。
幼いころからバレエに魅せられていたものの、マッチョなものを志向する父親に抑圧され、軋轢の中で育ったこと。スケートに生きる希望を得てフィギュアの男性シングルで優勝したこと、ゲイであることが公になった最初のオリンピック選手になってしまったこと、みずから設立したカンパニーでのバレエ+スケートというべき革新的なショウ、エイズ罹患・・・ジェットコースターのような生涯が、貴重な映像の数々、手紙、彼自身の肉声などで綴られます。1984年に来日した時のフッテージが紹介されているのも驚きました(氷上に掲示板を置き、観客に採点させる演出に憤慨したそうですが)。
ジョンが亡くなって25年、アメリカで“マシュー・シェパード事件”が起きて11年。愛とは? 芸術とは? 道を貫くこととは? ぼくは帰り道、改めて考え込んでしまいました。5月31日から新宿ピカデリー、東劇、アップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開。177.png




by haradakazunori | 2019-05-16 09:26 | 映画

ギターはもう聞こえない

c0348127_15465571.jpg
 
映画『ギターはもう聞こえない』(J'entaends plus la guitare)の試写に行きました。1991年、フィリップ・ガレル監督作品。第48回ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を受賞しています。セリフは作家・詩人のマルク・ショロデンコが書きました。
フィリップの父は俳優のモーリス・ガレル。10代の頃から映画監督を始め、21歳の時に“ファム・ファタール”ニコと出会ってしまいました。以来、ニコは7本ものフィリップ作品に出演し、72年から79年にかけては結婚生活も送りました。「62年に生まれた子供の父親はアラン・ドロン」、「ポール・マッカートニーやジム・モリソンとも交際していた」といわれる、あのファッション・モデルで女優で歌手の、確実に一時代の文化のミューズであったニコを妻にしていたのです。
この映画はニコの死(88年)を受けて制作されました。濃厚に愛し合い、ドラッグにおぼれ、破滅へと向かってゆくジェラール(ブノワ・レジャン)とマリアンヌ(ヨハンナ・テア・ステーゲ)は往時のフィリップとニコの反映でもあるのでしょう。陰惨でもあるストーリー、最小限に抑えられたセリフ、雫が垂れていくかのような音楽が一体となって、約100分、見る者を引き込んでいきます。
音楽はピアニストのファトン・カーンが担当。マグマの初期メンバー、そしてヨシコ・セファーとZAOを組んだ人物です。共演者はヴァイオリン奏者のディディエ・ロックウッド、サックス奏者のエルトン・ディーン。つまりこの映画はロック・ファンだけではなく、プログレ・ファン、ジャズ・ファンの耳をそばだたせずにはおかないのです。ファトンは2011年、ディディエは2018年、エルトンは2006年にそれぞれ亡くなっています。彼らの演奏が聴けることも、この映画の限りない価値につながっているのです。フィリップ・ガレル中期監督作上映として、『救いの接吻』(音楽はバルネ・ウィラン)と共に2019年4月27日より東京都写真美術館ホールにて公開、ほか全国順次公開。165.png




by haradakazunori | 2019-04-06 09:37 | 映画

パパは奮闘中!

c0348127_11204554.jpg
映画『パパは奮闘中!』の試写に行きました。第71回カンヌ国際映画祭批評家週間出品、第26回ハンブルグ映画祭批評家賞受賞他。監督はベルギー出身の気鋭ギヨーム・セネズ、主演はロマン・デュリス(『タイピスト!』)です。
ロマン・デュリス扮する“オリヴィエ”は妻、長男、長女と普通の日々を送っていました。しかし突然、妻が家を出ていってしまいます。どこにいったのだろう、どうして戻ってこないのだろう、いつ戻ってくるのだろう。オリヴィエは心がすっきりしないまま忙しい仕事をこなし、オンライン倉庫のリーダーとして部下をまとめ、慣れない子供たちの世話に追われ、あわただしい毎日を過ごします。やがて子供たちには頼もしさが加わっていきます。ママがいないのなら自分たちでしっかりやっていかなければ、できるかぎりパパを支えていこうという意志が、画面から匂いたつようになってくるのです。果たして母親は戻ってくるのでしょうか。エンディングには「こう来たか」と、スッキリした気分になりました。
『クレイマー、クレイマー』にも通じるモチーフですが、思い起こしてみると、あれはやっぱりアメリカを舞台にした、まだネットのない時代の物語です。今回は2018年、ベルギー/フランスの合作です。そこに漂う現代性を深く感じ取りながら見ると深みも倍増でしょう。4月27日より新宿武蔵野館ほか全国順次公開。175.png





by haradakazunori | 2019-03-14 11:15 | 映画

シー・ラヴズ・ミー

c0348127_11231353.jpg
 
映画『シー・ラヴズ・ミー』の試写に行きました。トム・ハンクスとメグ・ライアンが主演して大ヒットした映画『ユー・ガット・メール』の、原点といえる作品です。
といってもこの『シー・ラヴズ・ミー』、たんなる映画ではないのです。いわばミュージカル(第70回トニー賞で、ミュージカル部門ミュージカル・リバイバル作品に輝く)の生録り、ライブです。『松竹ブロードウェイシネマ』という新シリーズのひとつで(松竹株式会社が日本映画史上初めて、ブロードウェイ・ミュージカルや演劇を特別に撮影し、それに日本語字幕をつけて、映画館で公開するプロジェクト)、ようするにニューヨーク・マンハッタンの劇場で見ているような臨場感が味わえるのです。
“物語そのもの”から始まらないところも粋です。まずは、ざわざわする客席を俯瞰で捉えるところから始まり、やがてオーケストラ・ピットにいるミュージシャンの横顔が映し出されます。そのうち画面の中のあかりが落とされて、物語が始まってゆくのです。
物語の内容については、もちろん「見た人のお楽しみ」ですが、とにかくわかりやすくてハラハラさせられて、だけど結果は楽しい。キーとなるのは“手紙”、そして恋に決して器用とはいえない(だから親近感も持てる)男女。あと個人的にはオルゴールのシーンが忘れられません。ぼくは見ながら「がんばれ、もうちょっとだ」「そこはそうじゃないんだよなー」「よかったね」等と心の中で声をあげておりました。原作は1937年に初演されたミクロス・ラズロが書いた『パフューマリー』。だけど80数年が経っても、人が持っている恋する気持ちというのは変わらないものです。もちろんシェルドン・ハーニク(詞)とジェリー・ボック(曲)の作風はロマンティックでスウィンギー、登場人物たちはセリフだけではなくヴォーカル・ハーモニーも見事です。
カメラは効果的に、うるさくならずにアップになったり引きになったりします。「ここを見たいなあ」というところを、しっかりクローズアップしてくれる印象を受けました。字幕も「うまいなあ」と思いました。
実際にニューヨークでミュージカルを見ようと思いたっても、実践するのはなかなか大変なことです。税関審査料、入国審査料、検疫使用料、国際通行税(これが高い)、空港保安料、空港使用料を合わせた金額の上昇は、そのハードルをますます高くしています。そんな時代に、オーディエンスの“ワキ”も含めて収録し、劇場そのものの空気を封じ込めたかのような当作品の公開は、まさに絶好のタイミングで行なわれるものといえましょう。
監督はデイヴィッド・ホーン、キャストはザカリー・リーヴァイ、ローラ・ベナンティ、ジェーン・クラコウスキー、ギャヴィン・クリール、バイロン・ジェニングス他。オーケストラのメンバーにはコントラバス奏者ジョン・ビールの名も確認しました(ウディ・ハーマン、フィリップ・グラス、バーブラ・ストライサンド等の作品に参加)。音楽ファン、ミュージカル&映画ファン、英語を上達したいひと、みんなが楽しめることと思います。
4月19日より東銀座・東劇、5月24日大阪なんばパークスシネマ、名古屋ミッドランドスクエア シネマで限定公開。公式Facebookではニューヨーク・ブロードウェイ公認の日本版特別予告編も見ることができます。




by haradakazunori | 2019-03-13 11:27 | 映画

サッドヒルを掘り返せ

c0348127_14253574.jpg
 
映画『サッドヒルを掘り返せ』の試写に行きました。オタク的なマインドを数パーセントでもお持ちならば、この映画に登場するファンたちのいちずな作品愛に胸が熱くなるのは間違いないところでしょう。“サッドヒル”とは、1966年の大ヒット映画『続・夕陽のガンマン』(イタリア語タイトルIl buono, il brutto, il cattivo 英語タイトル:The Good, the Bad and the Ugly)の伝説的シーンに使われた“サッドヒル墓地”のこと。スペインのブルゴスに、撮影用として作られた墓地のセットです。そのセットは撮影後、そのまま放置され、当然ながらそのまわりは植物が生えたりして、地中に埋もれたも同然になってしまいました。
この“サッドヒル墓地”を掘り返して、今に蘇らせたい。とある『続・夕陽のガンマン』ファンの呼びかけで“サッドヒル文化連盟”が結成され、ヨーロッパ各地から賛同者が集まります。クワやホウキで掘り返すのです。結果・・・墓地は蘇りました。そしてその場所には、多くの“なりきりクリント・イーストウッド”が訪れ、ほかにもいろんなひとたちが「あ、この場面の舞台はここだったのか」とか、自分が物語の一部になったかのように動き回ります。出演者はもうここにいないけれど、ロケ地はあって、そこに自分が立つ。「映画カラオケ」の心は世界共通なんだなと思いました。
『続・夕陽のガンマン』の大ファンであるメタリカのジェイムズ・ヘットフィールド、主演をつとめたクリント・イーストウッド、音楽担当者のエンニオ・モリコーネ(あの印象的なトランペットのフレーズは、彼の意志ではなく、監督の強い希望だったそうです。そもそもモリコーネはトランペットを使う気がなかった)などのコメントは必見必聴ですし、有名な「橋の(誤)爆破」についてもしっかり触れられています。さらにセルジオ・レオーネ監督(89年死去)の貴重な談話も挿入され、若手の映画評論家による「なぜレオーネはフェリーニやアントニオーニのような高い評価を受けてこなかったのか。なぜ、近年再評価が進んできたのか」についての鋭い考察も個人的には大きなポイントのひとつでした。
墓地完成イベントでイーストウッドの映像コメントが流れたときの、文化連盟のひとたちの満面の笑顔、目の輝きに「オタク万歳」と叫びたくなりました。漫画原作でテレビドラマも始まった『トクサツガガガ』のファンにもぜひ見てほしいです。監督・製作・撮影・編集はギレルモ・デ・オリベイラ(1986年生まれ)、3月8日から新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー。166.png





by haradakazunori | 2019-02-08 10:31 | 映画

私の20世紀

c0348127_14253476.jpg
 
映画『私の20世紀』の試写に行きました。イルディコー・エニェディ監督が、1989年に残した作品です。監督の近作『心と体と』は2018年アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされましたが、『私の20世紀』はさかのぼること30年前の長編デビュー作。それがこの春、4Kレストア版として公開されるのです。
画面はモノクロ、物語は1880年のハンガリー・ブダペストで双子の姉妹が生まれたことから始まります。ふたりはやがて生き別れつつも美しく成長するのですが、20歳の時に偶然に再会します。“職業(といっていいのでしょうか)”は、かたや革命家、かたや詐欺師。そこに謎の男Zが出てくるのですが、彼は彼女たちが双子ということに気づかず、混乱の中に放り込まれてゆくのです。ぼくは男なのでどうしてもZの立場で見てしまうのですが(俺がもしZだったら、あの場面はこうするだろうなあという感じで)、女性の方、実際に双子の方が観ると、捉え方が大いに変わるのではないかと思います。
コメディ・タッチでもありますが、「さあどうだ笑え笑え」的な押し付けはなく、どこでどう笑うか(声をあげるか、クスリとするか、口角をあげるか、目を細めるかなど)は100%、見る人の任意という感じです。そして、非常に静謐な映画です。3月30日より新宿シネマカリテほか全国順次公開。182.png





by haradakazunori | 2019-02-07 10:07 | 映画

ヨーゼフ・ボイスは挑発する

c0348127_11583995.jpg
 
映画『ヨーゼフ・ボイスは挑発する』の試写に行きました。“社会彫刻”という概念を編み出したドイツの芸術家ヨーゼフ・ボイス(Joseph Beuys、1921〜86)に関するドキュメンタリー映像です。監督はアンドレス・ファイエル。ボイスの映像、発言・音声(各300時間分)、2万枚近くの写真を厳選し、さらにボイスゆかりの人々(約60名)にインタビューして、この作品を完成させました。
いつ生まれて、どんな風に成長し、どこで死に・・・といった内容ではありません。事前にボイスの軌跡を知ってから見ても、なんの事前知識なしに見ても、一定の神秘的なアート体験ができるのではと思います。個人的にはフルクサス時代の出来事、現代美術のグループ展「ドクメンタ」(ぼくはこのイベントを、今は亡き副島輝人さんを通じて知りました)に参加した時の様子、ニューヨーク・グッゲンハイム美術館での展示に対するアメリカ人客の反応などにスリルを感じました。映画には、死んだ本物のウサギとコラボする『死んだウサギに絵を説明するには』、グランドピアノを覆った『フェルト貼りピアノ』、コヨーテの野性味が印象的な『私はアメリカが好き アメリカも私も好き』などの“作品”が登場します。
「今は民主主義がない、だから俺は挑発する」と政治活動を行なう姿もしっかり捉えられていますし、帽子がトレードマークだった彼が、珍しく無帽でいる晩年の映像も挿入されます。なおボイスは1984年の来日時、ニッカウィスキーの広告にも登場しています。ポップで、アヴァンギャルドで、ダンディで、物事をつきつめて考える激しく熱い男の生きた証が107分にこめられています。3月2日からアップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺ほか公開。175.png




by haradakazunori | 2019-02-05 12:00 | 映画

山<モンテ>

c0348127_11181026.jpg
 
映画『山<モンテ>』の試写に行きました。ヴェネツィア国際映画祭『監督・ばんざい!賞』受賞作です。監督は『駆ける少年』や『CUT』などで堅い評価を集めたイランの巨匠、アミール・ナデリ。何度もイタリアを訪れ、この国でずっと映画が撮りたかったという彼が、ついにオールロケを行ないました。
といってもここに登場するのは「華やかなイタリア」ではありません。「歌の国イタリア」でもありません。そもそも音楽が登場しません。時代は中世後期、場所は南アルプスの山のふもとにある小さな村。まわりの山が太陽をさえぎるので、作物も育たず、住民はよりよい暮らしを求めてどんどん別の場所に移動していきます。しかしある一家だけは、先祖の墓や娘の墓があるこの場所にとどまっています。そこから先のことは、あらゆる要素が結末につながっているという印象を受けたので、詳細は差し控えますが、“自分とは肌合いの違うものを排除しようとする周りの目の冷たさ”、“極端に絞られた言葉(セリフ)の深み”、“画面の色合いの変化”にぜひじっくりと向かい合ってほしいと思います。出演はアンドレア・サルトレッティ、クラウディア・ポテンツァ、ザッカーリア・ザンゲッリーニ、セバスティアン・エイサス他。2月9日よりアップリンク吉祥寺にて公開、以降全国順次公開。175.png




by haradakazunori | 2019-01-16 11:20 | 映画

ノーザン・ソウル

c0348127_10345660.jpg
映画『ノーザン・ソウル』の試写にいきました。この場合のノーザン・ソウルとは、サザン・ソウル(メンフィスやマッスル・ショールズ)に対してデトロイトやシカゴのソウル・ミュージックを語る時に用いられる言葉ではなくて、英国マンチェスター等のイングランド北部周辺のクラブで好まれていたソウル・ミュージックを示します。製作総指揮デビー・グレイ、監督・脚本エレイン・コンスタンティン、主演エリオット・ジェームズ・ラングリッジ、ジョシュ・ホワイトハウス、スティーヴ・クーガン他。
舞台は1974年、イングランド北部の街バーンズワース。主人公の高校生、ジョンは変わり映えのしない毎日にうんざりしています。しかしある日、ユースクラブ(町内会の会合のようなものでしょうか)で、いままで聴いたことの内容なかっこいい音楽に合わせて、まるでブルース・リーのように激しく体を動かしながら踊る青年、マットと出会います。マットと親しくなったジョンは彼の影響を受けまくってソウル・ミュージックのとりこになり、ふたりでDJ活動も始めます。そして、あるカリスマDJが“Cover Up”(曲名を伏せて書ける)していた曲の正体もつきとめます。夢はソウル・ミュージックの本場にいき、レアなシングル盤を買いまくること。「ソウル・シンガーのライヴを見に行く」ではないところが、この物語の特質です。
巷ではポール・マッカートニー&ウィングス、ローリング・ストーンズ、エルトン・ジョン、ディープ・パープル、エリック・クラプトン、デイヴィッド・ボウイ等のヒット曲が流れていたのではないかと想像するのですが、この映画にはロックのロの字もありません。その代わり、活気に満ちた、通好みのソウル・ミュージックが次々と画面から流れてきます。“ルー・プライド”、“ビリー・バトラー”、“エドウィン・スター”、“キャミオ/パークウェイ”といった単語を含むセリフが出てくるごとに、耳がそばだちます。しかもエドウィン・スターといっても、ここで出てくるのは70年にモータウン(ゴーディ)から出たヒット曲「War」ではなく、1965年のRic-Tic盤「Back Street」なのですから、見ているこちらも胸が熱くなろうというものです。
私事ですが90年代、Goldmineというレーベルから出ていたソウル・ミュージックのコンピレーションCDをいろいろ買っていた頃を思い出しました。「アフリカ系アメリカ人ではないソウル・ミュージック好き」の方なら、山ほど共感できる映画だと思います。2月9日から東京・新宿シネマカリテ、兵庫・神戸元町映画館、2月16日から大阪・シネマート心斎橋で上映。ほか愛知・名古屋シネマテーク、京都・出町座、広島・横川シネマ、金沢・シネモンドで全国順次公開。166.png




by haradakazunori | 2019-01-15 10:37 | 映画

音楽ライター/ジャーナリスト、原田和典のブログです。
by harada kazunori
プロフィールを見る
画像一覧
更新通知を受け取る

最新のコメント

最新のトラックバック

venusgood.co..
from venusgood.com/..
venussome.com
from venussome.com
http://while..
from http://whileli..
http://while..
from http://whileli..
http://www.v..
from http://www.val..
「ボーン・トゥ・ビー・ブ..
from ここなつ映画レビュー

検索

ブログパーツ

最新の記事

北の果ての小さな村で
at 2019-05-17 09:30
氷上の王、ジョン・カリー
at 2019-05-16 09:26
雑誌情報
at 2019-04-23 11:24
ギターはもう聞こえない
at 2019-04-06 09:37
雑誌情報
at 2019-03-25 11:14
イベント#1、お越しいただき..
at 2019-03-17 09:38
本日、イベント開催!
at 2019-03-16 11:01
発売イベント、明日開催!
at 2019-03-15 10:40

外部リンク

ファン