「原田和典 ブログ人」

カテゴリ:映画( 90 )




ヨーロッパ横断特急

 
11月下旬から東京・シアターイメージフォーラム「アラン・ロブ=グリエ レトロスペクティブ」と題する特集上映が行なわれます。その試写にいきました。
ロブ=グリエは1922年フランス生まれ。小説家として頭角を現し、60年には『去年マリエンバートで』(アラン・レネ監督)で脚本を担当。63年に『不滅の女』で監督デビューを果たしました。
『ヨーロッパ横断特急』はフランスとベルギー合作、1966年の作品。舞台はパリからアントワープにかけて、です。上映当時“難解だ”という声もあがっていたようですが、劇中劇の中にまた劇中劇があり、さらにその中に劇中劇が盛り込まれるような展開は実に面白くバリエーションに富んでいて、ぼくは「ああなるほど、こういう手があったのか。こういう手管を自分の原稿に取り入れられないものだろうか」などと考えながら、手に汗にぎりつつ楽しみました。出演はジャン=ルイ・トランティニャン、マリー=フランス・ビジェ、クリスチャン・バルビエール等。シリアス部分とクスッとさせられる部分のバランスも絶妙です。マトリョーシカを見るような気分で楽しんでいただけたらと思います。
ロブ=グリエ、没後10年。再評価の時期が訪れました。165.png



by haradakazunori | 2018-10-19 09:38 | 映画

『Workers 被災地に起つ』トークイベント

9月21日にここで紹介した映画『Workers 被災地に起つ』が10月20日から公開されますが、東京「ポレポレ東中野」で16日間連続のトークイベントが行なわれることが決まりました。連日、監督や映画の登場人物はじめ、著名人や、ワーカーズコープゆかりの方々が登場予定とのこと。
詳しい情報はこちらへ。
地方劇場公開も全国各地で続々決定中で仙台/チネ・ラヴィータ(11/23〜)、北海道/札幌シアターキノ(12/8〜)、新潟/シネ・ウインド(12/8〜)となっています。とくに北海道、東北と縁のある方は特にいろいろ考えさせられる内容だと思います。179.png




by haradakazunori | 2018-10-18 09:36 | 映画

ぼけますから、よろしくお願いします。

c0348127_01540152.jpg
ドキュメンタリー映画「ぼけますから、よろしくお願いします。」の試写に行きました。監督・制作は数多くのドキュメンタリー番組を手がけてきた信友直子氏。舞台は広島県呉市です。
「私」(信友氏)は文学好きの父、カメラ好きで書道にも才能を発揮する母の一人娘として育ち、18歳で上京しました。45歳のときに乳がんが見つかり、その頃から自分や両親の姿を定期的に記録していくのですが、歳月を経るうちに、母に異変が起きていることに気付きます。さっき会った人やしゃべったことを覚えていない、などなど。母は認知症と診断されました。「私」は介護のために故郷に戻ることも考えましたが、父は「自分が介護する」と言いました。つまり95歳の夫が、87歳の妻をケアしていくのです。
もちろんそれが必ずしも順調にいくわけではありません。ヘルパーの助け、医師のアドバイスを得ながらの、申し訳ない表現ですが実にあぶなっかしい“二人三脚”です。「親がこういう状態になった時、自分は果たしてどんな行動をとれるか」、「自分がこういう状態になった時、子供たちはどう動いてくれるだろうか」・・・見るひとそれぞれの立場に、この作品は真実をつきつけてきます。
2016年にフジテレビ/関西テレビの「Mr.サンデー」で直収され、翌年、追加収録文を加えてBSフジで放送されたものをベースに、さらに取材と再編集を行なった完全版です。11月3日よりポレポレ東中野ほか全国順次ロードショー。




by haradakazunori | 2018-10-12 10:04 | 映画

Workers 被災地に起つ

c0348127_12205430.jpg
映画『Workers 被災地に起つ』(監督;森康行)の試写に行きました。
これは「ワーカーズコープ」に関するドキュメンタリーです。日本語にすると「労働者協同組合」。働く人や市民がみんなで出資し、民主的に経営し、責任をわかちあい、人と地域に役立つ仕事をおこす協同組合のことですが、現在の日本にはワーカーズコープを規定する法律はないそうです。
舞台となるのは岩手県の大槌町、気仙沼市、宮城県の登米市、亘理町。2011年3月に起きた震災、その爪痕がまだまだ残る街に、「放課後の子供、障碍児を預かってくれる場を」、「お年寄りが安心して暮らせる場を」、「地元の資源を生かした地域の復興を」といったリクエストが寄せられます。それはやがて「誰もが集える地域の拠点へ」「地域の魅力を生かした村の復興へ」へと発展していきます。「仕事は与えられるものではなく、自分で作り出すもの」という言葉も印象に残りました。
元飛行機整備士が、津波に関する話をするところも忘れられない場面のひとつです。建物の3階に避難したが、2階まで水が来て、やがてものすごい数の人が水面に浮かび始めた・・・という内容だったと思います。退職した後、いかにしてこの「ワーカーズ」とのつながりを得るに至ったか、そのあたりも見どころのひとつといえましょう。
ハンディキャップがどうとか世代の差を超えて、人々がひとつになった時に生まれる強いちから、それを味わわせてくれる作品です。最近の日本はとみに強力な台風や地震におそわれることが増えているように思います。東北在住以外の方にも、決して他人ごとではないはずです。10月20日から東京・ポレポレ東中野、11月23日から仙台・チネ・ラヴィータほか全国順次公開。165.png






by haradakazunori | 2018-09-21 11:30 | 映画

あまねき旋律(しらべ)

c0348127_13070674.jpg
映画「あまねき旋律(しらべ)」の試写にいきました。山形国際ドキュメンタリー映画祭・アジア千波万波部門の奨励賞・日本映画監督協会賞らを受賞。監督はアヌシュカ・ミーナークシ、イーシュワル・シュリクマール。
邦題通り、ここには音楽が溢れています。舞台はインド島北部、ミャンマー国境付近のナガランド州。雄大な風景と共に、村人たちの“ワーク・ソング”が大きくフィーチャーされます。ひとりが声を発すると、もうひとりが歌いはじめ、やがてそれが広がっていき、壮大なポリフォニーになります。いわゆる「全員まとまっての休符」はありません。さまざまなモティーフやメロディが重なって、渦を描くようにして高まっていく・・・という印象を受けたのですが、当の村人たちは手を休めることなく、決して音楽にのめりこむことなく、ごく淡々と、ポリフォニーを紡ぐのです。
途中、村人の話やナガランド州の歴史も紹介されます。1955年から57年にかけてインド軍が行なった虐殺や略奪、その後も続いた武力闘争についても映像を挿入しつつ触れられていますが、そこだけ「無音」なのも、すごい説得力です。音のような尊いものを、そんな場面につけてたまるか、という監督のスピリットをぼくは感じました。10月6日からポレポレ東中野ほか全国順次公開。169.png





by haradakazunori | 2018-09-12 10:45 | 映画

バッド・ジーニアス 危険な天才たち

c0348127_13002267.jpg
映画「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」の試写にいきました。タイ・アカデミー賞で史上最多12部門を獲得したヒット作です。監督のナタウット・プーンピリヤは、これが長編2本目だそうです。
ぼくは、これから見る映画の過程や結末を誰かがしゃべろうが気にする性格ではありません(自分がどう見て、何を感じたかは自分以外の誰にも属さない経験なのですから)、しかしこれは「ネタバレ」超厳禁、心をまっさらぴんの状態にして、130分のあいだ、手に汗を握りつづけることこそ最上の鑑賞法ではないかと思います。
メインとなる出演者は、有名進学校に通う4人。頭脳がすこぶる明晰な女子リンと男子バンクは奨学金を得て入学しています。苦学生といっていいでしょう。そして金持ちの家に生まれてぜいたく放題の女子グレースと男子パット。このふたりの成績はいまいちですが、カネですべてを可能にできると信じ込んでいるようです。
4人の人間模様、スリリングなカメラ・ワーク、リンと西洋人との攻防などなど、オーストラリアでの収録も交えつつ、すさまじい迫力で物語が進みます。28分間にわたるカンニング・シーンは、「ひとの答案を盗み見る」カンニングが遥か石器時代のものであることを示し、昭和に学生時代を送ったひとならきっと“カンニング・テクニックの進化と発展”に、唖然とするに違いありません。
ぼくは昨年、タイにいきました。スクリーンを見ていると、そのときに味わったタイ語のイントネーション、人々の肌のつやっとした感じ、足の長さ(タイのひとたちは、スタイルがいいという印象が強いです。ちなみにリンは176?の9頭身)も思い出して、いっそうこの作品に親しみを覚えました。9月22日から新宿武蔵野館でロードショー。172.png




by haradakazunori | 2018-09-06 12:23 | 映画

静寂を求めて -癒やしのサイレンス-

c0348127_12032563.jpg
映画「静寂を求めて −癒やしのサイレンス−」(原題;In Pursuit of Silence)の試写に行きました。監督はパトリック・シェン、出演はグレッグ・ヒンディ、ジョン・ケージ(往年のパフォーマンス)、宝積玄承など。
世の中、音だらけです。ぼくは東京を拠点にしていますが、外で電話をとったとしても、会話が難なくできる場所などほぼないといっていいです。音楽、交通、他人の会話などがひっきりなしに入ってくる状態では、受話器を通じてしゃべっていても、それは大声となり、場合によっては何度も訊き返すことになります。
に対して、この映画の静けさときたら。グレッグ・ヒンディは23歳の誕生日から1年間、一言もしゃべらないという誓いを立てて、徒歩でアメリカ大陸を横断することを決めます。これをモチーフA、「言葉」に関するものとしましょう。モチーフBは「音楽」に関するもので、ジョン・ケージの「4分33秒」、無響室などがフィーチャーされます。モチーフCは(西洋人の考える)「禅」ともつながっていくのでしょうか、沈黙と心のありようとの関係です。
この映画では以上のA,B,Cがフーガのように絡み合っています。そして見る者を内省的な気分にします。
ぼくは「音の出るもの」に関する仕事をしていて、チェンバロの独奏や歌手のアカペラなどマイクを使わないものからアンプ山積みのイングヴェイ・マルムスティーンやマイ・ブラッディ・ヴァレンタインまでさまざまなライヴを聴いてきました。そんな自分にとって静寂とは何なのか、観終えてからもしばらく考えました。
音楽ファンにこそ見てほしい一作です。9月22日からポレポレ東中野ほか全国順次ロードショー。168.png





by haradakazunori | 2018-09-03 12:04 | 映画

若い女

c0348127_12061148.jpg
映画『若い女』(原題Jeune Femme)の試写にいきました。監督・脚本:レオノール・セライユ、出演:レティシア・ドッシュ、グレゴワール・モンサンジョン他。2017年のフランス映画です。レオノールはこの作品でカンヌ国際映画祭のカメラドール(新人監督賞)、レティシアはリュミエール賞の最有望女優賞を受賞しています。
フランス映画というだけで、フランス語が聞こえてきたりパリの街並みが映るだけで“おしゃれだなあ”と思うくらい、ぼくは真正日本人なのですが、見進めていくと、この物語は決しておしゃれではないなと思うのに時間はかかりませんでした。10年以上付き合っていた彼氏に突然別れを告げられ、錯乱状態になる31歳の女性。そこから大切な猫(長毛種)を連れて、知り合いの家に泊めてもらう旅が始まりますが、見ていくうちに彼女の性格が相当に激しやすくわがままであることがわかります。つまり誰の部屋に転がり込んでもうまくいきません(母親とさえも)。やがて就職先を見つけ、忙しく働き始めるのですが、はたして彼女のキャラクターに変化は現れるのでしょうか・・・
ぼくは猫の魅力、および数回にわたって使用されているギル・エヴァンスの名演「ラスベガス・タンゴ」に惹かれて最後まで見入ってしまいました。8月25日から渋谷ユーロスペースでロードショー。163.png





by haradakazunori | 2018-08-20 12:17 | 映画

祈り 三部作

c0348127_12010460.jpg
岩波ホール創立50周年記念特別企画として、ジョージア(グルジア)の映画監督、テンギズ・アブラゼの“祈り 三部作”が上映されます。三部作のラインナップは『祈り』(67年)、『希望の樹』(76年)、『懺悔』(84年)。8月4日から9月14日まで毎日全作品が上映されます(『祈り』は1日2回、他作品は1回)。ぼくは『祈り』の試写にいきました。
『祈り』は今回が日本初公開。19世紀ジョージアを代表する作家V.プシャヴェラの叙事詩をモチーフにした作品です。テーマはキリスト教とイスラム教の対立です。宗教が複数に存在し始めた日から、こうした争いはやむことがないのでしょう。モノクロ画面は驚くほどカラフルに想像力をかきたててくれます。「ネガ/ポジの転換」、「ふたりの会話を捉えるうちに、そのひとりの顔がアングルからはずれるのだが、それでも移動もクローズアップもせず、そのままはずれた姿を捉え続けるカメラ」、「すさまじい傾斜の坂を踏みしめながらの人々の大移動」などなど。見た後にじんわりと余韻(それは決して甘美なものではないのですが)が沁みてきて、「あなたはどう思いますか?」と、誰かとじっくり話し合いたくなるような作品です。
若者の恋愛とそれを壊そうとする旧世代の軋轢を描く『希望の樹』、独裁者によって困難を強いられる国民を描いた『懺悔』ともども、ぼくは岩波ホールで見直そうと思っています。ぼくは明るく楽しい娯楽映画が好きですが、こういう作品にも接することが大切だなあと、身の引き締まる思いがしました。来年はアブラゼ監督の没後25年です。165.png




by haradakazunori | 2018-07-13 12:02 | 映画

ラ・チャナ

c0348127_10243169.jpg
映画『ラ・チャナ』の試写に行きました。監督はルツィア・ストイェヴィッチ。スペイン、アイスランド、アメリカの共同制作です。
ラ・チャナは1946年、バルセロナ生まれのフラメンコ・ダンサーです。子供の頃からフラメンコに惹かれ、父親の反対を押し切って活動を開始。19歳でバルセロナのタブラオ「ロス・タラントス」の人気ダンサーとなり、芸術家のサルバドール・ダリも彼女を見にしばしば通ったそうです。そして’67年には英国の俳優ピーター・セラ―ズが主演映画への出演を依頼しますが・・・
親の無理解、マネージャーもしていた夫の暴力と彼女の自由をしばりつけるマネージング・・・・。人気は上昇するばかりだったというのに、33歳の時、夫の自分勝手な脅しにより、引退を余儀なくさせられます。夫が財産を奪って彼女を捨てた後、不屈の意志で復活。1985年には来日もしました。
その6年後には引退しますが、「これは」と思う舞台があれば登場して現在に至っています。2013年の映像では、関節炎のため立って踊ることはできないものの、その表情や手の動きを見ているだけでも、ぼくはどんどん引き込まれて行きました。この映画が今の日本で上映されることは、いろんな意味で意義のあることだと思います。とにかく、すごい「意志のひと」に出会ってしまったと、畏怖の念に打たれました。7月21日からヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷アップリンクほか全国順次公開。169.png





by haradakazunori | 2018-06-27 08:35 | 映画

音楽ライター/ジャーナリスト、原田和典のブログです。
by harada kazunori
プロフィールを見る
画像一覧
通知を受け取る

最新のコメント

最新のトラックバック

venusgood.co..
from venusgood.com/..
venussome.com
from venussome.com
http://while..
from http://whileli..
http://while..
from http://whileli..
http://www.v..
from http://www.val..
「ボーン・トゥ・ビー・ブ..
from ここなつ映画レビュー

検索

ブログパーツ

最新の記事

外部リンク

ファン