「原田和典 ブログ人」

祈り 三部作

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岩波ホール創立50周年記念特別企画として、ジョージア(グルジア)の映画監督、テンギズ・アブラゼの“祈り 三部作”が上映されます。三部作のラインナップは『祈り』(67年)、『希望の樹』(76年)、『懺悔』(84年)。8月4日から9月14日まで毎日全作品が上映されます(『祈り』は1日2回、他作品は1回)。ぼくは『祈り』の試写にいきました。
『祈り』は今回が日本初公開。19世紀ジョージアを代表する作家V.プシャヴェラの叙事詩をモチーフにした作品です。テーマはキリスト教とイスラム教の対立です。宗教が複数に存在し始めた日から、こうした争いはやむことがないのでしょう。モノクロ画面は驚くほどカラフルに想像力をかきたててくれます。「ネガ/ポジの転換」、「ふたりの会話を捉えるうちに、そのひとりの顔がアングルからはずれるのだが、それでも移動もクローズアップもせず、そのままはずれた姿を捉え続けるカメラ」、「すさまじい傾斜の坂を踏みしめながらの人々の大移動」などなど。見た後にじんわりと余韻(それは決して甘美なものではないのですが)が沁みてきて、「あなたはどう思いますか?」と、誰かとじっくり話し合いたくなるような作品です。
若者の恋愛とそれを壊そうとする旧世代の軋轢を描く『希望の樹』、独裁者によって困難を強いられる国民を描いた『懺悔』ともども、ぼくは岩波ホールで見直そうと思っています。ぼくは明るく楽しい娯楽映画が好きですが、こういう作品にも接することが大切だなあと、身の引き締まる思いがしました。来年はアブラゼ監督の没後25年です。165.png




# by haradakazunori | 2018-07-13 12:02 | 映画

ラ・チャナ

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映画『ラ・チャナ』の試写に行きました。監督はルツィア・ストイェヴィッチ。スペイン、アイスランド、アメリカの共同制作です。
ラ・チャナは1946年、バルセロナ生まれのフラメンコ・ダンサーです。子供の頃からフラメンコに惹かれ、父親の反対を押し切って活動を開始。19歳でバルセロナのタブラオ「ロス・タラントス」の人気ダンサーとなり、芸術家のサルバドール・ダリも彼女を見にしばしば通ったそうです。そして’67年には英国の俳優ピーター・セラ―ズが主演映画への出演を依頼しますが・・・
親の無理解、マネージャーもしていた夫の暴力と彼女の自由をしばりつけるマネージング・・・・。人気は上昇するばかりだったというのに、33歳の時、夫の自分勝手な脅しにより、引退を余儀なくさせられます。夫が財産を奪って彼女を捨てた後、不屈の意志で復活。1985年には来日もしました。
その6年後には引退しますが、「これは」と思う舞台があれば登場して現在に至っています。2013年の映像では、関節炎のため立って踊ることはできないものの、その表情や手の動きを見ているだけでも、ぼくはどんどん引き込まれて行きました。この映画が今の日本で上映されることは、いろんな意味で意義のあることだと思います。とにかく、すごい「意志のひと」に出会ってしまったと、畏怖の念に打たれました。7月21日からヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷アップリンクほか全国順次公開。169.png





# by haradakazunori | 2018-06-27 08:35 | 映画

ストリートオブファイヤー

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映画『ストリートオブファイヤー』の試写に行きました。1984年公開の大ヒット作品の、デジタル・リマスター版です。監督・脚本:ウォルター・ヒル、主演はマイケル・パレとダイアン・レインです。
ストーリーはとてもわかりやすく、言葉は「生きている英語」で(教科書には載らないような)、音楽はかっこよく、演出は派手。ようするにひたすら楽しめる映画なのです。ぼくは途中から昭和末期の「漫画アクション」などに載っていた劇画を思い出しながら見ましたが、とにかく「ただ強行突破するのみ」的なストーリーに強烈なスピード感を覚えます。思いっきり短くいうと「ゾクに昔の彼女(今は歌手になっている)を誘拐された元彼が彼女を取り戻しに行く話」ですが、そこにドゥーワップ・グループを絡ませたり、警官との人間模様をはさんだり、盛り上げに盛り上げてエンディングにもつれ込みます。
歌手役のダイアンに与えられた曲は80年代テイスト満載で、この数年後、日本でもこういう曲は「大映テレビドラマの主題歌」にどんどん使用されて一定の支持層を得ます。この曲は違いますが、音楽(スライド・ギターを生かしたインスト部分だと思います)担当にはライ・クーダーの名がクレジットされていて、バック・ミュージシャンにはベンモント・テンチやティム・ドラモンドも名を連ねています。また酒場のバンドには、テナー・サックス奏者のリー・アレンがいるじゃないですか! ほんの数秒ですがアップで楽器を吹くシーンもあります。だから音楽ファンにも見逃すことができないのです。7月12日からシネマート新宿ほか全国順次公開。172.png





# by haradakazunori | 2018-06-26 11:26 | 映画

雑誌情報

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「ミュージック・マガジン」最新号に書いています。鈴木愛理さん、アップアップガールズ(仮)さんのインタビュー、のんシガレッツのライブレビュー等を担当しています。
「レコード・コレクターズ」最新号に書いています。
「CDジャーナル」最新号に書いています。
「ジャズジャパン」最新号に書いています。ニューヨークの「ビジョン・フェスティバル」レポが掲載されているはずです(現物未確認)。
「ブルース&ソウル・レコーズ」最新号に書いています。ニューヨークの「アフリカン・ダンス・ワークショップ」受講のレポートが掲載されています。
「HiVi」最新号で新連載が始まりました。タイトルは「東京ライブストーリー」。第1回目は先ごろ初来日したリロイ・ハトソンです。
ぜひお読みください!!!173.png




# by haradakazunori | 2018-06-25 10:19 | 書籍・雑誌

名前

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映画『名前』の試写にいきました。原案は直木賞作家の道尾秀介、監督は戸田彬弘、主演は津田寛治、駒井蓮。第13回大阪アジアン映画祭クロージング作品、第20回ウディネ・ファーイースト映画祭コンペティション部門、第18回ニッポン・コネクション ニッポン・ヴィジョンズ部門出品作品。
42歳の男はいくつものシチュエーションでそのつど名前や人格を使い分けています。離婚し、都会を離れた際に、「そうしたほうがいい」と悟ったらしいのです。各キャラクターを創案し、セレブかつキザにふるまいます。彼が創作したキャラクターは、かなり「なりきるには難易度が高い」ものですが、彼は必死に創作キャラと自分を一体化させようとします。本来の自分を消し去ってしまいたい、という思いは強まるばかり・・・という印象を、ぼくは冒頭の数シーンから受けました。
その男の目の前に突然現れたのが謎の女子高生です。当然ながら男は大いに戸惑いますが、一緒に時間を過ごすうち、数十年ぶりに太陽の光を浴びたかのように生き生きとした表情や振る舞い、軽快な会話をするようになってきます。それは彼がキャラを創案する前、まだ自分自身を生きていた頃に持ち合わせていた本来のキャラなのかもしれません。
「ああ、こうなるのか。常套手段をこういうふうに新鮮に見せていくのか」と一人納得していたら、次のシーンで裏切られてびっくり、ということが何度もありました。とにかく目が離せないのです。ミステリーのようでもあり、父もの・母もののようでもあり、不器用なまでに突進する青春ものでもあり。見終わったあと、じわじわと「もう1回、もっとディテールに注目して見なければ」という気持ちが盛り上がってきました。6月16日よりイオンシネマ守谷にて先行公開、6月30日より新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー。178.png





# by haradakazunori | 2018-06-14 11:06 | 映画

音楽ライター/ジャーナリスト、原田和典のブログです。
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