「原田和典 ブログ人」

カテゴリ:映画( 64 )




シーモアさんと、大人のための人生入門


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映画「シーモアさんと、大人のための人生入門」の試写に行きました。監督はイーサン・ホーク。“シーモアさん”とはニューヨークに住むピアノ教師シーモア・バーンスタインのことです。1927年に生まれ、ナディア・ブーランジェ等に師事。プロのクラシック・ピアニストとして活動した後、50歳で教師に転向しました。イーサンは「シーモアのピアノ・レッスンは、人はいかに生きるべきかということにもつながる奥深い教えに満ちている」といいます。
シーモアは指導者であり、ひとのうえにたつひとです。山の頂点にいて、裾野にいるひとをひきあげようとします。ゆえに「上から目線」ですが、これは年長者、しかも教師であるがゆえに避けられないことなのかもしれません。しかし言葉や物腰はあくまでも優しく、イーサンがだんだんこの指導者にひきつけられていく様子も映画は克明に捉えています。シーモアがエンディングで聴かせるソロ・ピアノも実に美しいです。2016年9月下旬、シネスイッチ銀座、渋谷アップリンクほか全国順次ロードショー。061.gif





by haradakazunori | 2016-07-26 09:52 | 映画

イレブン・ミニッツ

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映画「イレブン・ミニッツ」の試写に行きました。カンヌ、ベネチア、ベルリンの国際映画祭の主要賞を制覇したイエジー・スコリモフスキ監督が放つ最新作です。個人的には「エッセンシャル・キリング」の監督として心に深く刻み込まれています。主演はリチャード・ドーマー、ヴォイチェフ・メツファルドフスキ等。
この新作ではタイトル通り、夕方5時00分から5時11分にかけての物語(人間模様といえばいいでしょうか)が描かれています。ラストシーンが本当にすごいです。四方八方に散らばっていた点が一か所にまとまり、それがスローモーションでだんだんクローズアップされていく感じです。とにかくこのラストを見るだけで、それまでの数十分間を見ているうちに生まれた謎や疑問が氷解するのです。これは面白い、あっぱれです。8月20日からヒューマントラストシネマ渋谷、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開。061.gif





by haradakazunori | 2016-07-16 10:17 | 映画

聖なる呼吸 ヨガのルーツに出会う旅

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映画「聖なる呼吸 ヨガのルーツに出会う旅」(監督:ヤン=シュミット・ガレ)の試写に行きました。ヨガの魅力に惹かれたばかりの(つまり初心者である)監督がインドに向かい、“近代ヨガの父”T.クリシュナマチャリアの功績をたどり、その弟子であるB.K.S.アイアンガーやK.パタビジョイスらに取材。監督のヨガへの深い関心と、師匠のことをあけすけに語る(ほめてばかりではありません)弟子たちの回想が見どころ、という印象を受けました。それにしてもヨガの達人たちの関節の動きは、信じがたいほど柔軟です。
日本ヨガ界の第一人者であるというケン・ハラクマによる字幕監修もとてもわかりやすく、ヨガにまったく詳しくない僕も楽しく見ることができました。9月3日からYEBISU GARDEN CINEMA、9月10日から渋谷アップリンク、ほか全国順次公開。061.gif




by haradakazunori | 2016-07-14 10:09 | 映画

モンスター・ハント

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映画「モンスター・ハント」(オリジナル・タイトル「捉妖記」)の試写に行きました。妖怪アクションファンタジーの傑作といえばいいでしょうか。中国歴代興行成績No.1を確立したそうですが、それも納得できます。監督はラマン・ホイ、特撮顧問はジェイソン・H・スネル、美術総監督は種田陽平。出演はバイ・バイホー、ジン・ボーラン他。
時代背景は「大昔」に設定されています。当時、人間と妖怪は共存していました。しかし人間が偉ぶり出して天下を独占、妖怪は山奥へ追いやられ、その妖怪の世界でも内乱が起きます。紆余曲折があり、王子を身ごもっていた妖怪王妃は人間男性に子供を託します(どうやって託したかはぜひ映画をご覧ください)。男性は妊娠を経て無事“出産”、大根にそっくりな妖怪の男の子を授かります。とはいえ妖怪は妖怪、人間とはうまくいかないと感じた男性とその知り合いの女性(この時点ではまだ恋仲ではない)は、とある質屋に妖怪を売り渡すのですが・・・。
分かりやすい展開、CGの面白さ、妖怪の生き生きとした動き。言葉の壁を超えて、親子でも楽しめるのではないかと思います。8月6日からシネマート新宿ほか全国順次ロードショー。061.gif






by haradakazunori | 2016-06-23 09:17 | 映画

シング・ストリート 未来へのうた

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映画「シング・ストリート 未来へのうた」の試写に行きました。監督は「ONCE ダブリンの街角で」や「はじまりのうた」のジョン・カーニーが務めています。
すごく面白いです。音楽好きなら、セリフのいろんなところにニヤリとすると思います。「青春デンデケデケデケ」や「リンダリンダリンダ」の1980年代・アイルランド編という感じでもあります。
主人公の少年(フェルディア・ウォルシュ・ピーロ)は、学費の安い公立高校に転校します。アイルランド・ダブリンを襲った大不況によって、父親が職業を失ったからです。その高校は暴力喫煙なんでもありの世界。授業など誰も聞いていません(日本で「校内暴力」が話題になった時期と、ほぼ重なります)。少年の心の支えとなったのは「トップ・オブ・ザ・ポップス」というテレビの音楽番組でした。デュラン・デュランのミュージック・ビデオを見て、彼は感銘を受けます。
同時に彼は、モデルを自称する、ある年上の女性(ルーシー・ボイントン)のことがとても気になっていました。“僕のバンドのミュージック・ビデオに出ないか?”、まだバンドを作ってもいないのに少年は彼女に声をかけ、連絡先を手に入れます。
それからバンドを組むために仲間を集め、バンド名“シング・ストリート”を決め、練習し、オリジナル曲をつくり、ビデオを撮影し・・・という展開は、とても歯切れよく進みますが(1曲を仕上げるだけでもとんでもなく大変で、メンバー同士の確執や対立もあって・・・・というのが大半の現実だと思いますが、そんなのを映画でわざわざ見たくもないでしょう)、それと同時に少年の片思いが両思いに少しずつ変化していくことも大きな見どころです。
「僕は彼女と一緒にロンドンに行きたい。だけどそうするとバンドはどうなる?」。主人公の問いにバンド仲間が答えます。「先にロンドンに行ってバンドを売り込んでくれ。僕たちをこの町からひきあげてくれ」。
主人公は大のロック好きである兄の応援を得て、小さなモーターボートで彼女とふたり、海を渡ります。突然の大雨でびしょびしょになる途中で物語はエンディングへ向かいます。大海に飲み込まれたのか、それとも無事にロンドンに到着してレコード契約がとれたのか、それは見る者それぞれ想像すればいいのです。
“シング・ストリート”のオリジナル曲の作詞作曲はゲイリー・クラーク(かつてスコットランドのバンド“ダニー・ウィルソン”にいた)が担当。これまたポップで親しみやすく、とにかく物語にも映像にも音質にも、80年代ブリティッシュ・サウンドへの愛が溢れた作品という印象を受けました。バンド経験のある方は必見です。
7月9日ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷シネクイントほか全国順次ロードショー。061.gif




by haradakazunori | 2016-06-02 08:50 | 映画

ミスター・ダイナマイト

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ドキュメンタリー映画「ミスター・ダイナマイト ファンクの帝王ジェームス・ブラウン」の試写に行きました。脚本・監督・総指揮はアレックス・ギブニー、プロデューサーの一人はミック・ジャガーです。
行く前から心が弾みます。なぜならブラウンは忌野清志郎とならんで、ぼくの人生を決定づけた音楽家のひとりだからです。5歳の時、土曜の夜に放送されていたテレビ番組「ソウル・トレイン」に感激してから今までずっと、ぼくはブラウンに惚れ込んでいます。どんなことがあっても毎日、少なくとも1分間は彼のことを考えてしまいます。この映画を見る(見た)日は寝ている時もブラウンのことを考えていました。
映画は貴重な映像と、ありがたいインタビューのてんこもりです。ボビー・バード(2007年逝去)、メイシオ&メルヴィンのパーカー兄弟、ピー・ウィー・エリス、フレッド・ウェスリー、ブーツィ・コリンズ、クライド・スタブルフィールド、ジョン・ジャボ・スタークス、マーサ・ハイ、ダニー・レイら共演者の証言は、ひたすら生々しく、「ファンキー・ドラマー」誕生のエピソードには笑わずにいられません。ブラウン・チルドレンといっていいであろうクリスチャン・マクブライドやクエストラブは音楽的な分析を加え、アラン・リーズ(もとツアー・マネージャーで、今では世界一のブラウン研究家だと思います)やミック・ジャガーの発言も作品に重みを加えています。和製英語「マント・ショウ」の“マント”をしっかり英語通り“ケープ”と紹介していた字幕にも好感が持てました。
ライヴ・シーンではファンには有名な1968年ボストン、71年パリ、66年エド・サリヴァン・ショウ、64年T.A.M.I.ショウがフィーチャーされています。影響を受けた音楽家の映像としてルイ・ジョーダン、デューク・エリントン(サックスはジョニー・ホッジスではなくウィリー・スミス)、カウント・ベイシーらがほんの数秒ですが登場するのもうれしいものです。そのほか、アメリカの情勢とのかかわりを示す映像もたっぷりです。「ニクソンを支持して黒人からの支持が減った」「実業家としては失敗した」「給料はもらったが、レコーディングのギャラはゼロ」など、たんなる“絶賛映画”に終わっていない描写があるのも、監督の確かな視点を感じさせてくれました。そしてキャットフィッシュ・コリンズ、ウェイマン・リード、セント・クレア・ピンクニー等、今は亡きミュージシャンの雄姿に見とれてしまいました。
6月18日より角川シネマ新宿、渋谷アップリンク、吉祥寺オデヲンほか全国順次ロードショー。061.gif




by haradakazunori | 2016-04-28 10:20 | 映画

さとにきたらええやん

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映画「さとにきたらええやん」(重江良樹監督)の試写に行きました。
大阪市西成区釜ヶ崎にある施設「こどもの里」の物語です。寝泊りする子だけではなく、学校帰りに遊びに来る子や一時的に宿泊する子、様々な事情から親元を離れている子などが集うにぎやかな場です。「デメキン」と呼ばれる館長を中心に、母の暴力から逃れてきたマサキくん、兄弟に暴力をふるうことをやめて料理人になるという目標にむかって努力するジョウくんなどが、たくさんの仲間と共に助け合い、自分の可能性に開眼していく姿が描かれます。この町出身のSHINGO★西成のラップやライヴ風景も見ることができます。陽気でわかりやすい音楽は、大阪出身でもなく釜ヶ崎に足を運んだこともない自分と、その地の距離を近づけてくれました。
6月11日よりポレポレ東中野、6月中旬、第七藝術劇場ほか全国順次公開。061.gif




by haradakazunori | 2016-04-21 11:02 | 映画

ふたりの桃源郷

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映画「ふたりの桃源郷」の試写に行きました。山口県のローカル放送局である山口放送が開局60周年記念事業として制作した長編ドキュメンタリー映画です。
主人公である田中夫妻のことについて、僕は全く知りません。しかし1979年の映像で当時の年齢に関するテロップが出るので(夫65歳、妻60歳)、2016年の時点でもう彼らは生きていないのだな、ということはわかります。そして僕はすぐに、「この映画で自分たちは、彼らが老いて死ぬまでを見ていくのかも」とも思いました。
夫妻はその1979年に、長く住んでいた大阪を離れ、戦後しばらく住んでいた“山”に戻ります。そして自給生活を始めます。当時は驚くほど元気です。ねぐらにしている小型バスの中で、一緒の布団に入って就寝するシーンには、試写会場から笑いがもれるほどでした。しかし2000年を過ぎると(ふたりとも80歳を超えています)、夫は健康を害し、妻は物忘れがひどくなってきます。夫が93歳で亡くなった後も、妻はそれに気づかず、最晩年には寝たきりに。娘夫婦が献身的な看護をします。妻が亡くなった後、残された人々がどう“山”を守っていくか、そこも見どころです。
たしかに「ひとの家族の話」ではあります。ですが、この映画を見た方は、まず必ず登場人物の誰かに自らや親や子供を重ね合わせ、いつしか自分がストーリーの中にいるような気分になるのではないでしょうか。5月14日から東京・ポレポレ東中野、6月11日から山口県内5館で公開。061.gif






by haradakazunori | 2016-04-14 09:55 | 映画

ディストラクションベイビーズ

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映画「ディストラクションベイビーズ」の試写に行きました。見たことのないタイプの映画でした。監督・脚本は真利子哲也(脚本は喜安浩平と共同)。
真利子氏の作品を初めて見たのは忘れもしない、2011年の9月のこと。場所は水戸芸術館ACM劇場、作品は「NINIFUNI」です。車で延々移動するところ、コンビニで休憩するところ、厳しさを感じさせる冬の海の色など、いろんな場面を思い出します。まだ大きくブレイクする前の、ももいろクローバー(いわゆる無印時代)を起用している着眼点もすごいと思いました。その日は上映の後、ももいろクローバーZのライヴがありました。途中、すりばち状の会場がグワッと揺れました。余震です。
「ディストラクションベイビーズ」の主人公、芦原泰良を演じる柳楽優弥は、とにかくいきなり人を殴って殴って殴りまくります。相手に殴り返されて、血だらけになっても、さらに殴りに立ち向かっていきます。拳で殴るときの、低く沈んだ“ゴンッ”という音がリアリティを倍増させます。最初、彼から逃げていたのに、あることがきっかけで歩み寄って事件に深くかかわっていく高校生には菅田将暉が扮し、ほかにも那奈役の小松菜奈、主人公の弟を演じる村上虹郎らがストーリーの中で重要な役割を示します。連続ぶん殴りと“みこしかつぎ”の因果関係も、相当に奥深いテーマとして見る者につきつけられてきます。ライブハウス「サロンキティ」や、ひめキュンフルーツ缶、ナノキュンなどが出るシーンがあるのも個人的に高まりました。
サウンドトラックはZAZEN BOYSの向井秀徳が担当。ロックというよりフリー・ジャズ的な音で画面をかき乱します。5月21日から、テアトル新宿など全国ロードショー。061.gif






by haradakazunori | 2016-03-27 11:46 | 映画

エルヴィス、我が心の歌

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映画「エルヴィス、我が心の歌」の試写に行きました。“エルヴィス”とは、もちろんエルヴィス・プレスリー(1977年に42歳で死去)のこと。ジョン・マキナニー扮する主人公カルロスは、日中は工場で働きながら、夜になるとジャンプ・スーツを着てエルヴィスへのトリビュート・ライヴをしています。妻の名はプリシラ、娘の名はリサ・マリー。ピーナツバターとバナナをはさんだパンを食べ、インコ(オウム?)に“エルヴィス”という言葉を教え込みます。
エルヴィスに憧れてはいても、エルヴィスになれるわけではありません。エルヴィスに会いたくても、彼はもう亡くなっています。ライヴのギャラ未払い、工場での冷たい対応、別居中の妻と娘が交通事故にあったこと・・・それらの後、42歳になろうとしていたカルロスは憧れのメンフィス「グレイスランド」(エルヴィスの住居で、今は一般公開されている)に行きます。警備員の目をかいくぐり、立ち入り禁止エリアで一夜を過ごした彼が選んだ道は、この世を離れ、エルヴィスと同じ世界に旅立つことでした。
それは悲しくも切ないエンディングですが、20世紀音楽に魅せられたファンなら、ほとんどのひとが“あの世の方が楽しそうだな、だって面白い人はほとんど死んでしまったし”と思った経験があるはずです。そんなひとにこそ見てほしい映画です。劇中のエルヴィス・ソングは、プロの歌手であるカルロス(ジョン)自ら歌っています。監督はアルマンド・ボー(「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」の共同脚本者)、5月28日から渋谷ユーロスペース他全国順次公開。060.gif






by haradakazunori | 2016-03-18 11:48 | 映画

音楽ライター/ジャーナリスト、原田和典のブログです。
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