「原田和典 ブログ人」

カテゴリ:映画( 64 )




天使の入江

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7月22日より、特集上映「ドゥミとヴァルダ、幸福(しあわせ)についての5つの物語」が行なわれます(渋谷・シアターイメージフォーラムほか全国順次ロードショー)。
先日、「天使の入江」(ジャック・ドゥミ監督)の試写にいきました。1963年制作、今回が劇場正式初公開なのだそうです。出演はジャンヌ・モロー、クロード・マン等。
音楽は名匠ミシェル・ルグランが担当しています。曲によってはジャズ的なソプラノ・サックスやドラムスの音も聴こえてくるのですが、これはひょっとしてラッキー・トンプソンやケニー・クラークなのでしょうか。ストーリーの舞台は、フランス南東部の港町ニースにあるカジノです。たまたま出会った、ギャンブルに魅せられたふたりが織りなす、恋と駆け引きの物語です。
儲けてはスリ、儲けてはスリ、物を質に入れてもギャンブルを続ける女主人公の心情は「わかっちゃいるけどやめられない」といったところでしょうか。61年にリリースされた植木等(ハナ肇とクレイジーキャッツ)の「スーダラ節」との相関関係も気になるところです。
他の上映作品は「ローラ」(劇場正式初公開)、「ジャック・ドゥミの少年期」、「5時から7時までのクレオ」、「幸福(しあわせ)」、さらに「幸福(しあわせ)」との同時特別上映で「3つのボタン」(デヴィッド・ビニー、セバスチャン・テクシエ、ジャン=フィリップ・ヴィレ等が音楽を担当)。114.png





by haradakazunori | 2017-06-29 11:06 | 映画

めだまろん ザ・レジデンツ・ムービー

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めだまろん ザ・レジデンツ・ムービー」の試写に行きました。謎だらけの音楽パフォーマンス集団、ザ・レジデンツの謎にせまるドキュメンタリー映画です。監督・脚本はドン・ハーディー。
ぼくがレジデンツを好きなのは、覆面レスラー的なところがあるからでもあります。ザ・コブラとジョージ高野が同一人物だということを知ってしまったときのような、武藤敬司とグレート・ムタの対戦が不可能であることを知ってしまったときのような、見てはいけないものを見てしまった、ヤバイ現場に立ち会ってしまった感を、見る者・聴く者に抱かせるのです。30数年ぶりの来日公演が先日「ブルーノート東京」で開催され、ぼくも行きましたが(ライヴ評はこちら)、顔は覆い隠され、衣装も見る者の意識をそらすというか、目をちかちかさせる効果を狙っているようでした。そのライヴに接して、「なぜそこまで自分を隠すのか」と思ったファンは、この映画をなにはなくとも体験するべきだと思います。
ザ・レジデンツは約半世紀のキャリアを持っています。メンバーが不動なのか、それともその都度入れ替わっているのかも謎です。アメリカ南部から西海岸への移転、結成初期のパフォーマンス映像(フリージャズの影響が濃厚です)、ワーナー・ブラザーズでのリリースを望んでデモテープを送った話、自主レーベル“ラルフ・レコーズ”のこと、映像作品への先見性、往年のPVや近年のヨーロッパにおけるライヴ映像などが、歯切れよく紹介されていきます。インタビュイーはプライマスのレス・クレイプール、トーキング・ヘッズのジェリー・ハリソン、ディーヴォのジョシュ・フリース、マンガ「ザ・シンプソンズ」の原作者マット・グレイニング等。彼らは知人、ファンという感じで登場しますが、「ひょっとしたらこの中の誰かがレジデンツの一員かもしれない」と思うと、見る側にも一層の力が入ろうというものです。
「で、レジデンツっていったい誰なの?」という謎に、この映画がどのくらいまで答えてくれるのか。それについては、百聞は一見にしかずです。音楽好き、レジデンツ好きの友人を誘ってみて、見終わったあとにあれこれ「憶測」するのも楽しいのではないでしょうか。7月1日よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。149.png




by haradakazunori | 2017-06-08 09:38 | 映画

ボンジュール、アン

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映画「ボンジュール、アン」の試写に行きました。
原題は「Paris Can Wait」。何を待っているのだろうと思いながら見はじめましたが、やがて「ああ、そういうことだったのか」と誰もが納得することでしょう。主役のアン(ダイアン・レイン)は、多忙を極める映画プロデューサー(アレック・ボールドウィン)の妻。一緒に飛行機でカンヌからパリに行く予定でしたが、耳の調子がいまいちなので飛行機に乗るのは避けようと、車でパリに向かうことにします。ハンドルを握るのは夫の仕事仲間であるジャック(アルノー・ヴィアール)。フランス語のできないアンにとって、フランス人であり、フランスの名所をいろいろ知っていて、いろんな場所に知り合いのいるジャックの存在は心強いものでした。しかも「父親に似ている」というのです。
ふたりはいろんな場所を“寄り道”しながら、時間をかけてパリに向かいます。その間、さまざまな場所、さまざまな風景が画面に登場します。これは、一種のロード・ムーヴィーでもあるのです。暴力や犯罪のシーンもなく、ギョッとするような展開もないですが、そのかわり、おいしいに間違いないであろう食事、風にそよぐ草原や自然光などがスクリーンにあらわれて、なごませてくれます。
監督はエレノア・コッポラ。もちろんフランシス・フォード・コッポラの妻で、女優としても有名な、あのエレノアです。長編劇映画を監督するのは今回が初めてなのだそうですが、とてもインティミトな作品になっていると思います。7月7日からTOHOシネマズ シャンテ、TOHOシネマズ 日本橋、TOHOシネマズ 六本木ヒルズで公開。101.png





by haradakazunori | 2017-05-28 09:27 | 映画

ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣

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映画「ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣」の試写に行きました。監督はスティーヴン・カンター、イギリスとアメリカの共同制作です。
この作品はセルゲイのドキュメンタリーです。1989年ウクライナに生まれ、13歳で英国ロイヤル・バレエスクールに入学、19歳でロイヤル・バレエ団の史上最年少男性プリンシパルになります。しかしその2年後、人気絶頂の時に退団。ドラッグとも闘っていた描写もありましたが、ホージアのヒット曲「Take Me to Church」のミュージック・ビデオ(デヴィッド・ラシャベル監督)でのダンスが話題を集め、動画サイトでは1800万回以上再生されました(いまも増え続けています)。
この映画は2016年完成、ということはその数年前に制作が始まったのでしょう。そうなるとスタッフは当時「20代なかばのひと」を題材にドキュメンタリー映画を作っていた、ということになります。「何十年も前に死んだ伝説の人物」「長い時間を生きてきたレジェンド」ならともかく、現在進行形の気鋭を扱うケースは比較的珍しいはずです。それほどセルゲイが価値のある人物だ、ということでもあるのでしょうが、ぼくは、「この若さで英雄視されるのも、実に大変なことであるなあ」という気持ちを、“天才”に対して持ちました。
また印象的だったのは、子供のころに撮影されたダンスの映像がたくさんフィーチャーされていたことです。自分の世代にはありえなかったことです。さすが1989年生まれ(Perfumeと同世代です)だなあと感じました。両親も早くからセルゲイの才能に気づいていて、「いつか息子が大物になって、英語圏のスタッフがドキュメンタリーをつくるために尋ねてきたら、そのときに提供できるな」と思いながら撮っていたのではないか・・・とすら思えるほど、カメラ・ワークも絶妙なのです。
正直に言いましょう。見終わったあと、ぼくの周りをぐるぐるしていたのは、天才に対するあこがれと嫉妬です。天才ではない皆さんに、ぜひこれを見てほしいと思います。7月15日から、渋谷Bunkamuraル・シネマ、新宿武蔵野館で公開。101.png





by haradakazunori | 2017-05-27 10:17 | 映画

ローラ

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7月下旬、特集上映「ドゥミとヴァルダ、幸福(しあわせ)についての5つの物語」が行なわれます(渋谷・シアターイメージフォーラムほか全国順次ロードショー)。
その中から「ローラ」(ジャック・ドゥミ監督)の試写が行なわれました。1961年制作、201 2年のデジタル修復完全版です。出演はアヌーク・エーメ、マルク・ミシェル、ジャック・アルダン、アラン・スコット等。
ストーリーに関しては何度もいろんな方が語りつくしてきたことでしょう。確かに「語りたくなる力」を持つ作品です。初恋のひとを待ち続ける大人の女性ローラと、アメリカ人の兵隊に恋をする14歳のセシルの“相似”が見事です。書店とレコード店を兼ねた場所のシーンで、「サッシャ・ディステルのレコードが欲しい」「また今度ね」というような母娘の会話があったのにもしびれました。サッシャはジミー・レイニーの影響を受けたジャズ・ギタリストで、ポップス(シャンソン)歌手としても知られ、ルックスも良くてアイドル的な人気もあったのでした。ブリジット・バルドーと出会ったのは1957年頃、結婚寸前までいきました。
音楽はミシェル・ルグランが担当、のちに「Watch What Happens」という英語タイトルで世界に知られるようになるメロディはこれが初出です(「ローラのテーマ」)。ドゥミはこの曲がよほど好きだったのか、映画『シェルブールの雨傘』でも「カサールの告白」というタイトルで使用しています。ルグランの自伝では『シェルブール』が初出のように書いてありますが、「自伝は記憶違いの宝庫」というのが、ぼくの率直な考えです。
他の上映作品は「天使の入江」(劇場正式初公開)、「ジャック・ドゥミの少年期」、「5時から7時までのクレオ」、「幸福(しあわせ)」、さらに「幸福(しあわせ)」との同時特別上映で「3つのボタン」(デヴィッド・ビニー、セバスチャン・テクシエ、ジャン=フィリップ・ヴィレ等が音楽を担当)。必見です!172.png





by haradakazunori | 2017-05-26 09:14 | 映画

ハロルドとリリアン

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映画「ハロルドとリリアン ハリウッド・ラブストーリー」の試写に行きました。監督と脚本はダニエル・レイム、エグゼクティヴ・プロデューサーはダニー・デヴィ―トです。
これはハロルドとリリアンのマイケルソン夫妻の物語です。ぼくは不勉強にして、おふたりの存在をここで初めて知りました。故ハロルドはストーリーボード・アーティスト(絵コンテ作家)、リリアンは映画リサーチャーです。前者は“言葉で書かれた脚本をカメラの視点で捉え、カットごとにイラスト化した映像の設計図を作成する仕事”、後者は“映画を作るうえで必要な情報を調査・収集する専門家(時代考証など)”です。映画づくりに欠かすことのできない縁の下の力持ちが、この夫婦なのです。
ふたりの関わった映画は「十戒」「ベン・ハー」「ウエスト・サイド物語」「鳥」「卒業」「エクソシスト」「ロッキー」「スタートレック」「ラストエンペラー」等、数えきれないほどあります。洋画ファンなら、知らず知らずのうちに夫妻の偉業に接しているわけです。「ハロルドとリリアン ハリウッド・ラブストーリー」では、ハロルドの絵コンテと実際の画面を同時に紹介するシーンもあるのですが、この場面は特に圧巻です。いかに監督たちがハロルドのセンスを信頼し、高く評価していたかが、ありありとわかります。しんそこ「見てよかった」と思える心暖まる作品です。
5月27日よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国ロードショー。165.png





by haradakazunori | 2017-05-14 09:43 | 映画

夜に生きる

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映画「夜に生きる」の試写に行きました。監督・脚本・主演はベン・アフレック(原作はデニス・ルヘイン)。物語の舞台は禁酒法時代のアメリカです(つまりフランシス・フォード・コッポラ監督「コットン・クラブ」と同じ頃の時代を描いている)。それだけでもわくわくしますが、しかもアフレック演じる主人公が、警察幹部の息子からギャングへ転身するという変わり種なのです。何が善で何が悪なのか? 思いっきり主人公、揺れ動いてます。
時間が経っていくごとに主人公に感情移入していったのは、ぼくだけではないでしょう。「よかった、これで落ち着いたか」とホッとすると、「世の中、そんなに甘いもんじゃねえ」とばかりに、大どんでん返しがやってきます。2時間10分、油断できません。歌手ニーナ・シモンの伝記映画でニーナ役を演じたジョーイ・サルダナも好演です。
そして収録された物音の素晴らしさにも唸らされました。車が爆走する音、ピストルから弾が勢いよく飛び出すときの音、暴力シーンでの音、すべてがヴィヴィッドで生々しいです。5月20日から全国公開。165.png





by haradakazunori | 2017-05-12 10:21 | 映画

アムール、愛の法廷

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映画「アムール、愛の法廷」の試写に行きました。監督はクリスチャン・ヴァンサン、出演はファブリス・ルキーニ、シセ・バベット・クヌッセン他。
いかにも固そうなイメージのある「法廷」と、「愛」がどう結びつくのか? 主人公は裁判長です。99%のひとが彼を変わり者と思うでしょう。家族にも冷たくあしらわれます。でも一度、彼は燃えるような気持ちになったことがあります。事故で昏睡状態にあったときに手当をしてくれた女医に、です。
その彼女が、事件の陪審員に選ばれて、6年ぶりに彼の目の前に現れたのです。裁判長と陪審員が個人的に会ってはいけない、という決まりはありませんが、大人というものには「立場」があります。その女性には年頃の娘もいます。さあ、堅物であるはずの裁判長は、どう、この、自身の「老いらくの恋」(というほど老人ではないにしても)と向かい合うのでしょうか? フランス北部の都市、サントメールの街角風景も見ものです。
5月13日より、シアター・イメージフォーラムほか全国ロードショー。 





by haradakazunori | 2017-04-20 10:47 | 映画

皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ

 
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映画「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」の試写に行きました。2016年イタリア・アカデミー賞(ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞)で最多16部門にノミネート、7部門を受賞しました。
「鋼鉄ジーグ」ときいて、“なつかしい”と思う方もいらっしゃることでしょう。ぼくも子供の頃、再放送のテレビアニメを見たことがあります。原作は永井豪、主人公はいつの間にか人間からサイボーグに生まれ変わってしまった司馬宙(シバヒロシ)です。
この物語にインスパイアされ、イタリアの映画会社が、イタリア人の俳優を使って実写版を作ってしまったのです。監督・音楽・制作がガブリエーレ・マイネッティ、主人公のエンツォ(「俺はヒロシ・シバだ」というセリフもあり)には、「緑はよみがえる」や「海と大陸」に登場したクラウディオ・サンタマリアが扮します。
「鋼鉄ジーグ」がどのようにストーリーのダシとして機能しているかは、もちろん見てのお楽しみですが、個人的にはイタリア語に吹き替えられた主題歌にも大きな感銘を受けました。これを見て、ぼくはもっと今のイタリア映画に関心が湧いてきましたし、「鋼鉄ジーグ」自体も改めて鑑賞したくなりました。とにかく面白い作品です。「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」というタイトルは、日本でつけたものではなく、イタリア語のそれを直訳したものなのだそうです。
5月20日、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館でロードショー。165.png



by haradakazunori | 2017-03-31 11:49 | 映画

作家、本当のJ.T.リロイ

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映画「作家、本当のJ.T.リロイ」の試写に行きました。
J.T.リロイはベストセラー3冊を残した“天才作家”です。デビュー作「サラ、神に背いた少年」は、母親とその恋人から虐待を受け、母親の真似をして女装の男娼となった彼の“自伝”ということで世に出ました。しかしこれは創作でした。ローラ・アルバ―トという女性が、J.T.リロイという別キャラを演じ、自分の中で醸造した物語でした。
しかし、作品が大きな評判を呼んだことにより、J.T.リロイには時の人として人前に出る必要が出ました。しかしローラは140㎏もある一児の母で、どう考えても「男子」には見えません。そこで彼女は痩せていて若い親戚の女性にウィッグをかぶせ、大きなサングラスをかけさせて、彼女を「J.T.リロイ」として人前に出します。
もちろん発言や行動は付き人「スピーディー」に扮したローラが遠隔操作していたのですが、その女性も生身の人間であり、やがてローラの想定を超えて動き出してしまいます。「本当に、あのサングラスの女性が、あの作品を書いたのか?」という疑問が、やはり文章を生業とする雑誌記者の間から起こったとしても不思議ではありません。
とにかく「事実は小説よりも奇なり」を地で行くような話です。また電話での会話や留守電用のマイクロカセットテープが、これほど大きくフィーチャーされた映画も稀でしょう。J.T.事件は90年代終わりから2000年代半ばまでの話です。でも今はメールやLINEの時代です。でもメールやLINEの画面がスクリーンに大写しになったところで、「回っているマイクロカセットテープから流れる、こもり気味の音声」が生み出す迫真性、不気味さには遠く及ばないだろうなあ、という気もしました。
監督のジェフ・フォイヤージークは、あの感動的な名作「悪魔とダニエル・ジョンストン」の監督でもあります。彼の着眼点はすごい。改めて敬意を表します。4月8日から新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷で公開。061.gif




by haradakazunori | 2017-03-10 12:04 | 映画

音楽ライター/ジャーナリスト、原田和典のブログです。
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