「原田和典 ブログ人」

カテゴリ:映画( 48 )




夜に生きる

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映画「夜に生きる」の試写に行きました。監督・脚本・主演はベン・アフレック(原作はデニス・ルヘイン)。物語の舞台は禁酒法時代のアメリカです(つまりフランシス・フォード・コッポラ監督「コットン・クラブ」と同じ頃の時代を描いている)。それだけでもわくわくしますが、しかもアフレック演じる主人公が、警察幹部の息子からギャングへ転身するという変わり種なのです。何が善で何が悪なのか? 思いっきり主人公、揺れ動いてます。
時間が経っていくごとに主人公に感情移入していったのは、ぼくだけではないでしょう。「よかった、これで落ち着いたか」とホッとすると、「世の中、そんなに甘いもんじゃねえ」とばかりに、大どんでん返しがやってきます。2時間10分、油断できません。歌手ニーナ・シモンの伝記映画でニーナ役を演じたジョーイ・サルダナも好演です。
そして収録された物音の素晴らしさにも唸らされました。車が爆走する音、ピストルから弾が勢いよく飛び出すときの音、暴力シーンでの音、すべてがヴィヴィッドで生々しいです。5月20日から全国公開。165.png





by haradakazunori | 2017-05-12 10:21 | 映画

アムール、愛の法廷

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映画「アムール、愛の法廷」の試写に行きました。監督はクリスチャン・ヴァンサン、出演はファブリス・ルキーニ、シセ・バベット・クヌッセン他。
いかにも固そうなイメージのある「法廷」と、「愛」がどう結びつくのか? 主人公は裁判長です。99%のひとが彼を変わり者と思うでしょう。家族にも冷たくあしらわれます。でも一度、彼は燃えるような気持ちになったことがあります。事故で昏睡状態にあったときに手当をしてくれた女医に、です。
その彼女が、事件の陪審員に選ばれて、6年ぶりに彼の目の前に現れたのです。裁判長と陪審員が個人的に会ってはいけない、という決まりはありませんが、大人というものには「立場」があります。その女性には年頃の娘もいます。さあ、堅物であるはずの裁判長は、どう、この、自身の「老いらくの恋」(というほど老人ではないにしても)と向かい合うのでしょうか? フランス北部の都市、サントメールの街角風景も見ものです。
5月13日より、シアター・イメージフォーラムほか全国ロードショー。 





by haradakazunori | 2017-04-20 10:47 | 映画

皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ

 
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映画「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」の試写に行きました。2016年イタリア・アカデミー賞(ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞)で最多16部門にノミネート、7部門を受賞しました。
「鋼鉄ジーグ」ときいて、“なつかしい”と思う方もいらっしゃることでしょう。ぼくも子供の頃、再放送のテレビアニメを見たことがあります。原作は永井豪、主人公はいつの間にか人間からサイボーグに生まれ変わってしまった司馬宙(シバヒロシ)です。
この物語にインスパイアされ、イタリアの映画会社が、イタリア人の俳優を使って実写版を作ってしまったのです。監督・音楽・制作がガブリエーレ・マイネッティ、主人公のエンツォ(「俺はヒロシ・シバだ」というセリフもあり)には、「緑はよみがえる」や「海と大陸」に登場したクラウディオ・サンタマリアが扮します。
「鋼鉄ジーグ」がどのようにストーリーのダシとして機能しているかは、もちろん見てのお楽しみですが、個人的にはイタリア語に吹き替えられた主題歌にも大きな感銘を受けました。これを見て、ぼくはもっと今のイタリア映画に関心が湧いてきましたし、「鋼鉄ジーグ」自体も改めて鑑賞したくなりました。とにかく面白い作品です。「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」というタイトルは、日本でつけたものではなく、イタリア語のそれを直訳したものなのだそうです。
5月20日、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館でロードショー。165.png



by haradakazunori | 2017-03-31 11:49 | 映画

作家、本当のJ.T.リロイ

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映画「作家、本当のJ.T.リロイ」の試写に行きました。
J.T.リロイはベストセラー3冊を残した“天才作家”です。デビュー作「サラ、神に背いた少年」は、母親とその恋人から虐待を受け、母親の真似をして女装の男娼となった彼の“自伝”ということで世に出ました。しかしこれは創作でした。ローラ・アルバ―トという女性が、J.T.リロイという別キャラを演じ、自分の中で醸造した物語でした。
しかし、作品が大きな評判を呼んだことにより、J.T.リロイには時の人として人前に出る必要が出ました。しかしローラは140㎏もある一児の母で、どう考えても「男子」には見えません。そこで彼女は痩せていて若い親戚の女性にウィッグをかぶせ、大きなサングラスをかけさせて、彼女を「J.T.リロイ」として人前に出します。
もちろん発言や行動は付き人「スピーディー」に扮したローラが遠隔操作していたのですが、その女性も生身の人間であり、やがてローラの想定を超えて動き出してしまいます。「本当に、あのサングラスの女性が、あの作品を書いたのか?」という疑問が、やはり文章を生業とする雑誌記者の間から起こったとしても不思議ではありません。
とにかく「事実は小説よりも奇なり」を地で行くような話です。また電話での会話や留守電用のマイクロカセットテープが、これほど大きくフィーチャーされた映画も稀でしょう。J.T.事件は90年代終わりから2000年代半ばまでの話です。でも今はメールやLINEの時代です。でもメールやLINEの画面がスクリーンに大写しになったところで、「回っているマイクロカセットテープから流れる、こもり気味の音声」が生み出す迫真性、不気味さには遠く及ばないだろうなあ、という気もしました。
監督のジェフ・フォイヤージークは、あの感動的な名作「悪魔とダニエル・ジョンストン」の監督でもあります。彼の着眼点はすごい。改めて敬意を表します。4月8日から新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷で公開。061.gif




by haradakazunori | 2017-03-10 12:04 | 映画

まるでいつもの夜みたいに

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映画「まるでいつもの夜みたいに」(監督・撮影・編集 代島治彦)の試写に行きました。フォークシンガー、高田渡さんの東京におけるラストライヴを捉えた作品です。収録日は2005年3月27日、高円寺の居酒屋「タイフーン」にて。もう12年も昔のことです。テレビはまだブラウン管、愛知万博が開幕しようとしていて、「冬のソナタ」などの韓流ブームがあり、福岡ソフトバンクホークスが生まれた年。しかし音楽はもちろん、画面や街並みにも歳月の流れは感じられません。
1つのカメラで下手側から撮影していますが、1か所からしか撮ってないということが、さらにまたライヴ感を高めます。自分が下手側の席に座って、高田さんの実演をかぶりつきで体験しているような気になるのです。曲目は「失業手当」、「ごあいさつ」、「コーヒーブルース」、「ブラザー軒」などなど。「生活の柄」ではなく、「夕暮れ」で締めくくられます。フィンガーピッキングによるギターの音色、曲間にはさまるひょうひょうとしたしゃべり、観客とのやりとり(端っこにいる小さな女の子は、いまでは高校生ぐらいでしょうか)。今もどこかでライヴを続けているのではないだろうか?と思わずにいられません。
4月29日よりアップリンク渋谷にてGWロードショー、5月13日より横浜シネマリン、5月下旬よりココロヲ・動かす・映画館(4/15吉祥寺に開館)にて公開予定。また4月16日に青山CAYで行なわれる高田渡トリビュートライヴでも先行上映されます。060.gif





by haradakazunori | 2017-03-09 10:14 | 映画

oasis FUJI ROCK FESTIVAL'09

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oasis FUJI ROCK FESTIVAL'09」の試写に行きました。2009年7月24日のライヴです。もう8年近く前の収録です。信じられません。この約1か月後、ノエル・ギャラガーが脱退を表明し、バンドは終焉を迎えました。
MCは短いメンバー紹介程度、どんどん楽曲を続けていきます。リアム・ギャラガーは時々タンバリンを口にくわえ、うしろに腕を組んで、上唇をマイクにつけるようにしてうたいます。「Rock 'N' Roll Star」の迫力、ノエルが歌う「Don't Look Back in Anger」におけるミュージシャンと観客の一体感。ラストはビートルズの「アイ・アム・ザ・ウォルラス」です。「ノエルとリアムが一緒のフレームに収まって動いている」ということも、今となっては歴史的事件なのだ、と思います。大雨が降りしきる中、旗を振ったり合唱したりする超満員の観客も、臨場感を高めます。
「あのときはこうだった」というような関係者の懐古的な談話もなく、「今にして思えば」的な編集もなく、ようするに、フジロックのオアシスのパフォーマンスを淡々と、余計なものを一切加えず、しかし卓越したカメラ・ワークと音響で捉えているだけですが、この(ある意味)そっけなさにも好感が持てました。ぼくは一度もオアシスのライヴに足を運ぶことなく終わってしまったので、本当にありがたいものを見たという感じです。3月4日から、新宿ピカデリーほか全国の劇場で期間限定上映されるほか、一部劇場では2週間上映が予定されています。061.gif







by haradakazunori | 2017-02-05 10:53 | 映画

サクロモンテの丘

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映画「サクロモンテの丘 ロマの洞窟フラメンコ」の試写に行きました。監督はチュス・グティエレスです。
「サクロモンテ」とはスペイン・アンダルシア地方のサクロモンテ地区のこと。ここにかつてロマたちが集い、ロマとイスラムの文化が融合し、「洞窟フラメンコ」が生まれました。しかし63年にカルメン・アマジャが亡くなり、その後さらに水害が起こり、そこに住んでいたひとたちは住む場所を追われました。
この映画はサクロモンテの歴史を、数々の関係者へのインタビューで構成したものです。案内役はフラメンコ界のアイコン的人物であるクーロ・アルバイシン。ダンサーのラ・モナ、ライムンド・エレディア、ギタリストのペペ・アピチュエラ、歌手のニーニョ・デ・オスナ等が登場するだけではなく、往時の貴重な写真もたっぷり紹介されます。
ロマへの差別のせいでしょうか、かつては地図にさえ載せられていなかったというサクロモンテ地区。ぼくはフラメンコには決して詳しくないですが、それでも、とてもわかりやすく、見ごたえのある作品だと感じました。ラストに登場するライヴも大迫力です。
2月18日、有楽町スバル座、アップリンク渋谷ほか全国順次公開予定。061.gif




by haradakazunori | 2017-01-26 10:54 | 映画

SUPER FOLK SONG~ピアノが愛した女。~

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矢野顕子が1992年に発表したカヴァー・アルバム『SUPER FOLK SONG』には、制作過程を撮影したドキュメンタリー・フィルムもあります。それが約25年ぶりにデジタル・リマスターのうえ、再び劇場公開されることになりました(監督は故・坂西伊作)。
画像はモノクロ。矢野顕子はアコースティック・ピアノを弾き語りし、ときにレコーディング・ブースで自身の演奏を聴き返しながら、音楽する喜びや創造の苦しみをあけっぴろげに表現していきます。個人的には指ならしのところでパット・メセニーやエディ・ハリスのジャズ曲を演奏しているところにも興味をひかれましたし、名エンジニア・吉野金治や当時のマネージャー、デヴィッド・ルービンソンの姿を見ることができたのも嬉しいものです。ぼくはフォーク~ニュー・ミュージックに関してまだまだ認識不足ので、原曲がどういう楽想になっているのかは不勉強にして知りません。ですが、矢野顕子がそれらの楽曲に、ものすごく幻想的なハーモニーやリズムをつけ、自身の世界に染め上げていることはしっかり伝わりました。
「ああ、四半世紀も前なのだなあ」と思うところは、テープがまわっていることぐらい。音楽は新鮮そのものです。2017年1月6日から、新宿バルト9ほか全国の劇場で15日間限定ロードショー。061.gif





by haradakazunori | 2016-12-12 10:49 | 映画

ブラインド・マッサージ

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映画「ブラインド・マッサージ」の試写に行きました。監督はロウ・イエ、原作はビー・フェイユィによる中国のベストセラー小説。原題は「推拿」といいます。第64回ベルリン映画祭で銀熊賞を受賞、台湾の第51回金馬奨では作品賞を含む6冠、第9回アジア・フィルム・アワードで作品賞と撮影賞を獲得しています。
舞台は南京にある盲人マッサージ院。「いつか見えるようになる」と言われ続けたことが嘘であることがだんだんと分かってきたシャオマー、見合いを繰り返すもののうまくいかない院長のシャー、客から「美人」と言われるが自分では何のことだかわからない(見えないので)ドゥ・ホンが開始3分の1ぐらいの時間、強烈な存在感を印象付けます。そしてシャーの同級生のワンと、その若い恋人のコンがマッサージ院に転がり込んできます。シャオマーはコンに関心を示しますが、それに気づいた同僚は彼を風俗店に誘います。そこで風俗嬢マンと出会い、シャオマーは・・・
複雑で濃密な人間関係、ぼかしや揺れを多用した画像、生々しさにあふれたセリフや行動。どこかの国のどこかのドラマのように、disabledsを天使のように扱ったり神聖化したりしていません。目が見えようと見えなかろうと同じ人間なのです。優しくマッサージするというよりは、こちらの感覚に鋭いものを突き立ててくる問題作だと思います。ぜひ体験してほしい作品です。2017年1月14日より、アップリンク渋谷、新宿K’s Cinemaほか全国順次公開。061.gif





by haradakazunori | 2016-12-10 10:10 | 映画

エヴォリューション

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フランス映画「エヴォリューション」の試写に行きました。監督・脚本はルシール・アザリロヴィック。物語の鍵を握るのは10歳の少年ニコラ(マックス・ブラバン)、その母親(ジュリー=マリー・パルマンティエ)、ステラ(ロクサーヌ・デュラン)です。
ニコラは、少年と女性しかいない人里離れた島で母親と暮らしています。その島には何とも奇妙な病院があり、そこに住むすべての少年が医療行為の対象になっています。異変に気付き始めた二コラは、夜半に出かける母親の後をつけました。すると母親は、海辺でほかの女性たちと「ある行為」していました。それがなんなのか、探ろうとしたニコラは・・・。
これは怪奇小説なのか、母の愛を渇望する物語なのか。耽美的な映像と、セリフを極限まで抑えた演出が見る者を引きずり込みます。映画祭で上映されるや否や「初期クローネンバーグを思わせる!」「ルイス・キャロル、グリム兄弟、アンデルセンの死体を掘り起こした」等、大きな反響を巻き起こしたとのことですが、100人いれば100通り、1000人いれば1000通りの感想が出る作品という印象を受けました。つまり、見て感じるしかないのです。
「エヴォリューション」(進化)とは、果たして何を意味するのか? 11月26日から渋谷アップリンク、新宿シネマカリテ(モーニング&レイト)ほか全国順次公開。061.gif





by haradakazunori | 2016-11-10 11:22 | 映画

音楽ライター/ジャーナリスト、原田和典のブログです。
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